人格形成のカギを握る!『劣等機能(Inferior functions)』

 

こんばんは。7月はなかなかすっきりしない日々が続きましたが、やっと夏が到来といったところですね~!雨空もまた一興ではあるのですが、久々に見る太陽の光も夏らしくて良いものです。

雨空もまた一興…といえば、私が7歳の時に当時入院していた母のためにオリジナルの絵本のようなものを描いてプレゼントしたんです。それは「まわりを見てごらん」という冒頭に始まり、さまざまな動物たちの雨の日の行動を紹介していきます。リスが尻尾で雨宿りをしていたり、“秋田ふき”という背の高いふきの葉で雨宿りをしている動物がいたり…。そういった、晴れの日では見ることのできない動物たちの姿が見られるのだからどんよりした雨空の日もまた素晴らしいものだ、といった内容でした。
おそらく当時の私は「入院していることも悲観しないでほしい」という励ましの気持ちでこの作品をプレゼントしたのだと思います。ふつうはそんな内容を病気で入院している母親に送るのはモラルがないと感じるのでしょうけど、母親はその絵を今でもずっと保存していて「このころは天才だったのに」と皮肉を言ってくるほどです(笑)世の中には人間の深層まで理解しようとする人間というのもいるものですね。

さて、本日はその「人間の深層」がテーマになった記事です。久々に目安箱の投稿をご紹介させていただきますが、この方のほかにも本当に多くの方に同様のご質問をいただいておりました。せっかくなのでSNSではなくブログにてご回答させていただきたいと思います。




劣等機能に対する考察

まずは目安箱のご質問を紹介させていただきます。

いつもブログを楽しみにしています!
記事がアップされる度、ひとつひとつの考察のボリュームや深さに圧倒されます!
さえこさんのブログに出会い、理解を深めたくてA3!を始めました^ ^

心理機能のうち、劣等機能の扱い方について質問があります!
日々の中で劣等機能が顔を出している…と感じるシーンが度々あります。
さえこさんは劣等機能をどう捉え、どのように扱っていらっしゃいますか?

私は劣等機能Siを持つENFPです。
Siが弱いからこそNeが輝くのだと思うのですが…
Siを意識して自分なりに使ってみるのですが、私の修行不足のせいか裏目にでることが多いと感じます。周囲の人々がSを使うことに長けているせいかもしれませんが…

お時間あるときに教えていただけると嬉しいです^ ^

ご投稿いただきありがとうございました!こちらのご質問にお答えしていこうと思います。

劣等機能・・・それは人格形成のカギである

タイプ論をはじめとする性格類型論の大きな特徴は各心理機能の「相互作用」にあるでしょう。例えば人間の体格をジャンル分けしたときには【身長が高い⇔低い】の両方の特徴を持つことはできませんが、性格類型論では【直観⇔感覚】は誰しも両方の特徴を持っているとされています。

これは精神分析学が示す「人間の精神構造は意識と無意識の領域によって成り立つ」という見解が関係しています。

私たちの意識(エゴ):主機能と補助(第二)機能

その人の中でもっとも高精度な機能

我々の「意識」の領域にある機能が主機能、および補助機能です。ENTPの私で言えば①Ne②Tiですね!これは日常生活で最もナチュラルに使用しているアプローチであり、精度が高い機能です。

これは私のキャラクター分析の中でも最も重要な判断ポイントです。
例えば千景で言えば、彼は日常的にはISTJ型に見えないかもしれません。内向型の特徴を持ちながらも飄々とした態度で本心を隠すところがありますからね。彼が嘘をついり冗談を言うのは「特徴的」かもしれませんが、「ナチュラルで高精度」とは言い難いですよね。やはり彼の中で自然かつ精度が高いのはSi:物事の詳細を知覚です。5幕で監督が言ったオズのセリフの細かい言い間違いに気付いたシーンは、ぽろっと出てしまったSiです。何気ない振る舞いにこそ、この主機能というのは現れるものです。

第二機能は主機能の補助的に使われるものですが、こちらも同様に自然で高精度となります。

無意識:劣等機能と第三機能

ユングの考える「劣等機能」

一方、劣等機能は使えないわけではありませんが精度が高くありません。それゆえ一般的な類型論の書籍やWebサイトなどでは「明らかに劣っているので意識的な開発が必要な機能」として扱っていることがほとんどです。

ですが、MBTIの開発者はこのような扱いをしていませんし、そもそもユング自身はむしろ劣等機能を人格形成のうえでとても大切なものとして考えていました。(彼のこの理想はソシオニクスが汲んでいます)

ユングの議事録には、彼が劣等機能のことを「アルカイックだ」と言っている描写があります。アルカイック…聞いたことはあるけどよく意味は分かっていない言葉のひとつかもしれませんが、意訳すると「古拙」という言葉です。これは文字通りの「古くて拙い」という意味ではありません。

【古拙】こせつ
[名・形動]古風で技巧的にはつたないが、素朴で捨てがたい味わいのあること。また、そのさま。

古拙(こせつ)の意味 – goo国語辞書

このようにユングは劣等機能の「拙さ」を認め、その無垢さを尊重していました。

「無意識」の役割

ユングは個々の精神活動は無意識からエネルギーを得て創造性を発揮すると考えていました。
我々の肉体も、呼吸をしたり歩いたり眠ったりするためにはエネルギーが必要ですよね。これは内臓などが正常に働いてくれることによって実現可能になっているわけですが、「風邪がよくなった」とか「肌が荒れてしまったなぁ…」というのは認識できても「腸内の善玉菌が活躍してくれているおかげで消化吸収が効率的に行われているなぁ~」とか「ミトコンドリアが正常に働いていないな…」などといったことまでは認識も実感もできませんよね(笑)

これは我々の意識・無意識も同じ仕組みだと考えます。臓器が正常に動かないと我々は活動することができないように、無意識化の機能が正常に動かないと健全な精神活動を行うことができないのです。

Ne使用者の例:劣等Si

さて、ロジックばかり説明されてもよくわからないなという方もいらっしゃると思うので参考になるかはわかりませんが筆者の例をご紹介しましょう。ご質問者さまも外向的直観(Ne)が主機能だとおっしゃっていることですしね。

Neのアプローチのために必要なものとは?

特徴的なNeの日常的アプローチには下記のようなものがございます。

● 知的好奇心旺盛(知らないものを頭で理解したい)
● 3歩先に起こりうる可能性のあるあらゆる事象を考えながら行動
● 物事の要点をすぐに把握する

このようにNeとはとても知的、インテリジェンスな機能です!

皆さん、インテリジェンスと聞いたらどんなイメージを思い浮かべますか?研究者、参謀、評論家などさまざまあるかと思いますが、これらのイメージに共通することは「知識・情報に通じている」というところでしょう。Ne使用者の様々な洞察にもこの知識と情報への精通は絶対条件でもあります。根拠のしっかりしていない論説というのは、どこか説得力がありません。

例えば私がキャラクターの性格タイプや行動の根拠を分析するのも難なくサラリとやってのけているように感じられるかもしれませんが、ストーリー内の細かな情報を集積しているという背景がございます。「私は知識・情報をじゅうぶんに持っている」という前提がないと、自分の洞察に自信を持つことができません。情報がじゅうぶんでない場合、信憑性のない他人の意見に衝動的に飛びついてしまったり言っていることがいまいち現実味に欠けてしまうなどします。これはENTPだけの機能に見えるかもしれませんが、素晴らしいENFPというのもまた相当な量の知識情報が集積されています。だから彼らの話は説得力があり、腑に落ちるのです。

細部まで知り尽くすSiの凄み

その知識・情報こそが内向的感覚(Si)です。しばしばSiとは「オタク的」と言われる機能でもありますが、料理、メカニック、人間、植物などの限られたひとつの物事について異常な知識を持っているというのはSi使用者の特徴だと思います。

一度ツイッターでも話題に出しましたが、Si使用者というのは会食の場で人が唐揚げを何個食べたのかをきちんと把握していたり、エレベーターのボタンの違いと特徴を細かに把握しているような“細かい”人々です。他のタイプの方は「人が唐揚げを何個食べようがどうでもいいじゃん!」「エレベーターのボタンなんて気にしたこともなかった!」などと思うでしょう。このSiタイプの持つ情報というのは、他者から見たら取るに足らない情報・知識に過ぎないのです…。

しかしそんな取るに足らない些細な情報を集める習性を持つSi使用者たちの行動に意味がないと言っているわけではありません。エレベーターのボタンについて知り尽くした人間の考える「押しやすくコンピューターシステムにも則った画期的なエレベーターのボタン」というのは、何も知らない人間が考えたものよりも期待できるものだと思いませんか?Si使用者のことを一言で表すなら「雨垂れ石を穿つ」。取るに足らないような些細な情報でも、それが集まることで物事の本質を突くようなパワーを持つことができるのです。(A3!で最もわかりやすい例は咲也の「ショーは終わらない」のシーンでしょう。)

そんなSi使用者もまた、Neの価値に気付かないまま闇雲に情報集めをするだけでは、ただのコレクターの域を出ることができないまま。Si使用者のコレクションを現実の世界で有用し役立てるためには、Neの存在は必要不可欠なのです。

劣等機能は単純に“劣っていること”の意ではない

このように主機能と劣等機能は表裏一体で、お互いが支え合うような機能であることが分かったかと思います。私は日常的に人が唐揚げを何個食べたか覚えていることはできませんし、大事なことはしっかり覚えてるくせに取るに足らないことは忘れてしまいます。

これらの感覚機能は意識にはないので日常的なアプローチとして使用できるようにすればするほど、直観機能はどんどん出番を失い自信を失ってしまうことに繋がるのではないでしょうか?Ne使用者が現実世界へのアプローチとして使用するのは開かれた直観機能ですから、得意の直観機能を使ってどうにかするしかないのです。私は「私は取るに足らない事実はすぐに忘れる」という事実は認めているので、それを知ったうえでどう対策を取るか?ということは得意のNeで考えています。そしてそのNeの原動力となっているのがSiであるということ、これこそが「劣等機能の開発が人格形成の上で必要」の真意でしょう。

じゃあどうしたら劣等機能は強化されるの?

私がひとつ前に書いた記事にこのようなものがございます。

この記事にてご紹介したキャラクターたちはナチュラルで精度の高いNeを使うENTPのキャラクターです。両者の共通点はやはり、「知識・情報を注意深く集めている」ところにあるでしょう。ベルゼブブは暇だから牢獄を図書館に改造していたわけではありませんし、入間さんも警察官だからただただ情報を集めているわけではありません。二人には「みんなが自然的に安心して暮らせる世界にしたい」という秘められた欲求があります。通常それは外から見えるものではなく、行動の動機を観察していくことで「ぼんやりと見えてくる」ものです。

心の欲求に気付くこと=「自分は正しい」という思いから開放させること

ENTPのキャラクターの例で言えば、外から見た印象というのは「頭の回転が早く、いつも余裕がある」「おせっかいで理屈っぽい」「知恵を武器に勇敢に戦う」このような感じでしょうか。このようにどうしてもENTPというのは利発でロジカル、その賢さはときに狡猾なように映ることも少なくありません。しかし内面に眠るアタラクシアの欲求――「みんなが自然的に安心して暮らせる世界にしたい」これを無視することで、ENTP得意の高度なロジカルシンキングは独りよがりで周囲を傷つけ突き放すだけの凶器になってしまい兼ねません。

この相反する欲求に気付くことは即ち「自分が正しいという思い込みから自由になること」です。どう見てもアタラクシアの考え方というのはENTPの特徴とは相反するものなので、この欲求を持っていることに気付くことは容易なことではないかもしれません。自分の考えに固執し、思い通りに行くような道を選んでばかりいては当然「自分は正しい」という思いを強めるばかりです。この考えから自由になることとは即ち「思い通りにいかない経験」であり、それが逃れようのないことであればあるほど本人の気付きの大きなチャンスでもあるのかもしれません。

結局のところ類型論を勉強したところで劣等機能を開発させることはできません。無意識下の機能(劣等機能・第三機能)の存在とはその価値に気付き、許容するもの。そのためには、自らの経験から導き出すしか、方法はないのです。あくまでも類型論は様々な価値観の人がいるということを知り、この気付きのためのヒントになるだけに過ぎません。

まとめ:結局はバランスが大事

人から一目置かれる人物というのは、非常に器用かつ自然に主機能を使います。A3!で言えば咲也や綴などは代表的かもしれませんが、彼らは非常に無意識のNeやSeが見えやすい人物です。咲也で言えば人間に対する非常に細やかなデータベースをただのデータベースで終わらせることなく、しっかり人間の本質を見抜きそれを集団の形成や運用に役立てています。また綴は、自分の中の確かな洞察を内部にとどめたままにするでなく、「本を書く」という実際的な行動により体現していますし、何よりも綴の洞察がゾッとするほど“現実”を踏襲しているというのが彼が無意識下のSeの価値を大切にしている証拠でしょう。

このように意識:無意識というのはどちらかが疎かになってはいけないものです。しかし実際の人間を見ているとこのバランスが安定している人というのは思っているよりも少ないです。何かに掴まることでようやく立てている人が多数派ですから、自分の力で立ち更に歩みを進めている人間というのは非常に人間として深みがありかっこいいと感じます。私もいずれはそな深い人間になりたいものです。もちろん何かを必死に掴みながらも自立する方法を模索している人間の姿というのもまた美しいとも感じるんですけどね。

今回も少しむずかしい話になってしまったかもしれませんが、ツイッターなどでも少しずつ補足していけたらと思います!引き続き、よろしくお願いいたします。




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